患者主導の医薬品開発のためのパレクセルのソリューション
患者主導の医薬品開発には、患者支援者との30分以上の面談や、ウェブサイト上での意欲をかき立てられるような文章以上のものが必要です。 それは開発の初期段階から始まり、その後のほぼすべての意思決定に影響を与える体系的なアプローチです。 弊社の患者支援部門は、スポンサーが患者さんのインサイトを活用し、複雑化する償還環境に対応し、リスクを軽減し、患者さんに適切な利益をもたらす商業的に実現可能なプロダクトを開発できるよう支援します。
By Xoli Belgrave, Executive Director, Drug Development Services
Published on: Jul 8, 2025
7 min
新しい治療法は治療対象となる患者集団で試験する必要があります。これは科学的、医学的、倫理的に不可欠です。しかし、私たちはまだその段階に達していません。
2014年から2021年の間にFDAが承認した薬剤のうち、黒人系の患者さんに対する治療効果と副作用を含む臨床試験データに基づいたものはわずか20%でした¹。 米国の多発性硬化症 (MS) 患者の30%を黒人系とラテン系アメリカ人が占めているにもかかわらず、MSの治験参加者に占める割合は5%未満であり²、 これは問題です。なぜなら、アフリカ系アメリカ人とヒスパニック系アメリカ人のMS患者は、白人よりも全体的な障がいと症状の重症度が高いことが、研究により示唆されているからです³。 臨床データにおける根深いギャップに対処するため、規制当局は多様な治験を義務付けています。これは社会の健全性にとっても不可欠です。研究が包括的でない場合、取り上げられないコミュニティの健康格差が拡大し、早期死亡や、健康状態の悪化、信頼の欠如につながります⁴。 企業にとって研究結果が一般化できない場合、償還や市場への浸透に悪影響を及ぼし、イノベーションを阻害する可能性があります。パレクセルのシニアディレクターであり、患者インクルージョンの責任者であるXoli Belgraveに開発初期段階で多様性計画を策定することにより、医薬品開発がどのように効率化できるのかを尋ねました。
Belgrave:確かに前進しています。特に従来のように新薬の試験を主に白人男性に行うのではなく、男女を同数ずつ治験に参加させるようになっています。しかし、データを見ると治験への参加には、依然として人種的・民族的不平等が存在することがわかります⁵。
多様性、公平性、包括性 (DEI) により、初期段階の研究から日常的に除外されてきた多くの特別な集団やグループが包含されるようになりました。65歳以上の人々、子ども、妊娠中・授乳中・生殖年齢の女性、LGBTQIA+コミュニティ、社会経済的地位の低い患者さん、肥満の患者さん、障がいのある人々は、臨床研究への参加において障壁に直面している集団の一部です。弊社が考慮するその他の要因としては、農村部と都市部の地理的条件、テクノロジーリテラシー、クリックやタップできるデバイスへの精通などが挙げられます。
Belgrave:多様性プログラムを成功させるには、時間、労力、投資が必要ですが、開発初期段階で綿密な戦略を採用すれば、タイムラインが順調に進み、コストのかかるやり直しや市場参入の遅延を防ぐことができるため、長期的にはコスト削減につながります。
パレクセルでは規制当局から臨床エビデンスパッケージで過小評価されている人種や、民族集団を対象とした市販後試験の実施を求められている治験依頼者を支援するケースが増えています。部分承認の場合、追加の治験データとリアルワールドエビデンス (RWE)を組み合わせることで、要件を満たすことができます。パレクセルのデータによると、試験全体を再実施するには1,000万ドルから2,000万ドルの費用がかかり、募集戦略の見直しには1施設あたり最大5万ドルの費用がかかる可能性があります。また治験依頼者はリアルワールドエビデンス (RWE) を取得し、患者サブグループ解析のための外部対照群を構築するために、患者さん1人あたり120ドルの費用を負担することもあります。さらに最近の調査では、FDAが新薬や生物製剤の認可申請の審査を遅らせると、1日あたり60万ドルから80万ドルのコストがかかると推定されています⁶。
Belgrave:企業が対象疾患の疫学を十分に理解すると、「主力」の治験実施施設では代表的な患者集団を登録できないことに気づくかもしれません。この場合、治験依頼者は、新たなキーオピニオンリーダー (KOL)や、より多様な患者さんにアクセスできる地域密着型の治験実施施設を特定し、関与するための資金を割り当てる必要があります。少数民族系の研究者を治験責任医師 (PI) や治験実施施設の看護師として関与させることで、より民族的に多様な患者さんの登録を促進することができます。
地域密着型または学術機関のPIや治験実施施設によっては、治験の経験が浅く、より多くのトレーニングを必要とする場合があります。これは研究予算の初期段階から組み込む必要があります。治験依頼者は治験に参加するすべての治験実施施設に多様性を持たせる必要はありません。求められるのはプログラム全体における多様性です。既存の「慣れ親しんだ」KOLや治験実施施設を、より多様性があり経験の浅いKOLや治験実施施設と組み合わせ、アイデアや専門知識の交換を促進することは、効果的なアプローチとなり得ます。弊社では治験依頼者に対し、各治験実施施設の得意な分野に集中できるようにアドバイスしています。
Belgrave:たとえば、ある治験依頼者が乳がんの治療法を開発しており、一定の割合でヒスパニック系の女性を登録する必要があると仮定しましょう。もし治験参加者募集や計画段階で多様性を組み込まずに、均一な第I相および第II相試験を実施した場合、第III相試験で治験責任医師と治験実施施設を慌てて探すことになります。オンコロジーでは第I相試験に多様性を組み込むことが可能です。第I相がん試験では健康なボランティアではなく患者さんを登録できるため、治験責任医師は開発段階ごとにデータを集約できます。そのため、後から多様性を取り入れるよりも経済的です。第II相試験の終了時に包括性を検討するのでは遅すぎますし、費用もかかります。
プログラム段階で早期に計画を立てることで、臨床開発の後の段階での効率性が高まります。たとえば、第I相試験から第III相試験まで同じ施設を利用することで、関係する地域社会とのパートナーシップがより強固になります。
第I相試験の早い段階で開始し、後から比較試験や二次治療試験を実施すれば、すでに患者プールが存在するため、ゼロからではなく既に存在する患者集団を基盤として作業を進めることができます。転移性がんと初期段階のがんを比較研究する場合も同様です。
Belgrave:2022年にFDAとカナダ保健省が多様性ガイダンス文書を発表し、治験依頼者に対して、人種、民族、性別、年齢のバランスを取り、多様な患者さんを募集することを強く要求しました。その後の2022年12月には、米議会が2022年食品医薬品包括改革法 (FDORA) を含む歳出法案を可決しています⁷。 FDORAは治験依頼者に対し、ピボタル臨床試験の多様性行動計画の提出を義務付けました。このプロセスの一環として、FDAは2023年11月29日と30日に公開ワークショップを開催し、臨床研究における多様性の向上についてステークホルダーからの意見を募ります⁸。 そして2023年12月にFDAは最終ガイダンスを発行し、治験依頼者は180日以内にそれを実施する必要があります。
パレクセルでは2024年5月の期限に向けて、クライアントに開発中のすべてのアセットについて多様性行動計画を速やかに策定するようアドバイスしています。
FDAの多様性に関するガイダンス草案 (2022年4月) ⁹では、治験依頼者に対してピボタル治験デザインの提出前、第II相試験の終了までに多様性計画を作成することを推奨しています。これは新薬承認申請 (NDA)または生物学的製剤承認申請 (BLA)では、性別、年齢、人種別の有効性と安全性のデータを提示し、特定のサブグループに必要な投与量の変更または投与間隔を特定する必要があるためです。しかし、生理学的差異や遺伝的変異を確立するには、エビデンスが必要です。可能な限り早期に集団を選択することには、確固とした科学的・医学的理由があります。関連性がある代表的な患者集団から薬物動態データ、薬力学データ、ゲノム薬理学的データを収集することで、薬物曝露と反応の解析に役立てることができます。これは可能であれば、第I相試験または第I~II相試験から開始すべきです。
欧州では英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が、多様性に関する変化を主導しています。MHRAはFDAの多様性計画の要件に厳密に準拠したガイダンス草案を作成中です。パレクセルはMHRAと業界との協議に参加し、治験依頼者による遵守が容易になるように、FDAのガイドラインと一致した指針を作成するよう業界に働きかけました。
Belgrave:包括的な臨床試験にはいくつかの課題があります。米国だけでも患者コミュニティは、地域や社会経済的背景によって異なります。その違いを世界全体に拡大すると、課題はさらに複雑になります。シンシナティの都心部で有効な方法が、ワイオミング州の農村部でも有効とは限りません。米国で有効な方法がフランスでも有効とは限りませんし、フランスで有効な方法が韓国でも有効とは限りません。多くの患者さんが居住する地域の近くに治験実施施設がないと、治験参加者募集の目標達成が困難になるため、企業はこの点を調査する必要があります。
弊社では最近、重篤な自己免疫疾患を対象とした第III相試験の実施でクライアントを支援しました。そこで疾患発症率の高いアフリカ系アメリカ人とラテン系のコミュニティからの登録を最大化するため、患者さんと治験実施施設の関与を高めることを目的とした2つの戦略を採用しています。画像による多様性の表現と、適切な健康リテラシー用語を用いた患者さん向け教育ツールの導入です。また、患者さんに交通手段と育児のサポートを提供しました。治験実施施設とは臨床登録マネージャーを通じて連携し、臨床登録マネージャーが紹介経路のマッピングと地域社会のベストプラクティスを共有。試験参加者の38%は、民族的および人種的に多様な背景を持つ患者さんから募集されました。これはFDAがこの疾患に対して定めた20%の多様性目標と、業界平均の12%を上回っています。
多様な患者さんのニーズと制約を考慮し、脱落を最小限に抑える実用的な試験デザインを採用してください。そして患者さんと医療専門家を早期に関与させ、彼らの意見や声を聴取します。治験実施施設の看護師は高齢者と介護者、幼児とご両親などのさまざまな集団への対応や試験来院のスケジュール設定に精通しています。パレクセルでは看護師の意見を参考に、患者さんと地域社会にとって役立つようにプロトコルのデザインを最適化しています。これにより治験参加者の募集と参加継続が改善します。
治験資料は地域に応じて複数の言語に翻訳してください。最近、試験情報と同意説明文書を北京語に翻訳していなかったため、希少がんの患者さんを登録する機会を逃しました。北京語はカリフォルニア州の特定地域で広く使用されています。ニューヨーク市のある行政区では、クレオール語やロシア語を含む9つの言語に文書を翻訳しました。実行可能で文化に配慮した試験デザインは、より効率的です。現在の環境では、こうした試験デザインは効果的な医薬品開発のための前提条件であり、単なる努力目標ではありません。
Contributing Expert
患者主導の医薬品開発には、患者支援者との30分以上の面談や、ウェブサイト上での意欲をかき立てられるような文章以上のものが必要です。 それは開発の初期段階から始まり、その後のほぼすべての意思決定に影響を与える体系的なアプローチです。 弊社の患者支援部門は、スポンサーが患者さんのインサイトを活用し、複雑化する償還環境に対応し、リスクを軽減し、患者さんに適切な利益をもたらす商業的に実現可能なプロダクトを開発できるよう支援します。