包括的なコミュニケーション計画において不可欠となるペイシェントジャーニーへの理解

By Nichola Gokool, Vice President, Customer Strategy and Innovation, Medical Communications

Published on: Jul 7, 2025

4 min

包括的なコミュニケーション計画において不可欠となるペイシェントジャーニーへの理解

信頼とエンゲージメントを構築するための5つの戦略

臨床研究を成功させるには、医療従事者 (HCP)、患者さん、介護者に対して、疾患、利用可能な他の治療法、治験終了後の治療オプションについて早期から教育を行い、これを継続していく必要があります。臨床試験が患者さんの生活と治療過程に適合する時期・場所・方法を理解することが不可欠です。HCPと患者さんのための総合的な医療コミュニケーション戦略をデザインし実装することで、医療と患者さんのコミュニティ内で信頼とエンゲージメントが構築されます。これによって早期の特定と登録が容易になり、治療の進歩と患者さんへのアクセスが促進されます。パレクセルでは、臨床試験のコミュニケーションを成功に導く重要な要素を特定しました。

早期に関与 

希少疾患、複雑疾患、慢性疾患の患者さんには、多くの転換点が存在します。臨床試験に参加するかどうかは、その1つです。治験責任医師にしても、治験依頼者にしても、意思決定にとって理想的な会話がどのように進むのかを予測できる人はほとんどいません。 パレクセルでは話し合いを通じて、患者さんが次のような質問や懸念事項に対して有意義な回答が得られるようにすることを重視します。

  • 臨床試験は人生におけるほんの一瞬ですが、その後に何をもたらすでしょうか?
  • 参加後は他の治験に参加できますか (または参加できませんか)? 
  • 潜在的な副作用は、治療や生活の質/職業上の目標と矛盾するでしょうか? 
  • 参加者は他のHCPと治療や情報をどのように調整する必要がありますか?

早期開発では研究推進派や紹介ネットワークだけでなく、患者さんのインサイトに関する信頼できる情報源として、患者支援団体 (PAG) を関与させることが極めて重要です。

ペイシェントジャーニーとインフルエンスマップは、どのHCPが患者さんを治験責任医師 (PI) に紹介しているか、また各疾患で紹介ネットワークがどのように機能しているかを判断するのに役立ちます。 

対話の継続

治験中に参加者からさまざまな問題や懸念が生じる可能性がありますが、治験責任医師や他のHCPは参加者の関与を継続させるために、それらに対処する必要があります。たとえば、多くの人が交通手段やその他の支援サービスを必要とします。参加者は自身の疾患に関する最新情報や、新しいデータや治療の選択肢を求めることがあります。また、有害事象やその他の健康関連の合併症の管理が、課題となることがあります。

パレクセルでは治験参加者、治験責任医師、PAG、HCP間で継続的なフィードバックを統合して問題を予測し、教育資料を事前に提供して参照できるようにすることで、治験への参加中断を最小限に抑えるための取り組みを行っています。

包括的なコンテンツ

患者さんの声を医療コミュニケーションに取り入れることで、コミュニティ固有の用語を正確に理解・認識・適用できるため、患者コミュニティの共感を呼ぶことができます。パレクセルではコンテンツ開発に焦点を当て、医療コミュニケーション担当者を対象とした包括的な言語トレーニングモジュールを作成しました。これらのモジュールでは、人種、民族、性同一性、障がい、社会経済的考慮事項を取り上げており、さまざまなコミュニティ内で正しい用語と画像を使用するためのガイドラインを提供して、日常の会話や文書・視覚資料での包括的なコミュニケーションを促進します。

特定の疾患や病状、診断の段階、患者さんの既存の知識を考慮して、患者さんの経験レベルに基づいて内容をカスタマイズすることが重要です。

コンテンツの適切な配布

どのように臨床試験の情報を受け取りたいかに関する患者さんのインサイトを収集することは、ターゲット層とのつながりを強化する上で重要です。内容を理解しやすいコンテンツを複数のフォーマットで利用できる詳細情報にリンク付けし、アクセスできるようにすることで、多層的なアプローチを提供でき、エンゲージメントの強化につながります。デジタル化とAI主導の世界や、さまざまな年齢層と人口統計に適応することで、内容をより包括的かつ魅力的なものにすることができます。

現在、日本で小児適応症を対象に実施されているプロジェクトで、弊社は物語を読み聞かせるアプリとウェブサイトに加えて、印刷された絵葉書を併用することを提案しました。絵葉書の片面には子どもたちの興味を引く塗り絵が描かれ、もう片面にはQRコードが記載されています。親御さんはそこから治験に関する詳しい情報にアクセスできます。その内容はマルチフォーマットのアプローチを使用して、治験の特定の人口統計と場所に合わせて調整されました。

患者さんの経験を活用

患者フォーカスグループと特定のプロジェクトを審査すると、資料で適切な言語と用語が使用されているかどうかに関するフィードバックが得られるため、治験のコミュニケーション計画を改善できます。

たとえば弊社では最近、治験に参加している気管支拡張症の患者さん向けに一連のニュースレターを作成しました。気管支拡張症は肺の気道が炎症を起こして厚くなり、過剰な粘液が発生する治療不可能な慢性呼吸器疾患です。患者さんは持続的な咳を伴い、、大量の痰が産生されます。パレクセルは患者フォーカスグループとともに、3ヵ月超にわたってニュースレターの内容をレビューしました。患者さんからは、暑い夏の間の気管支拡張症の症状の管理 (暑さにより症状が悪化することが多い) や食事と栄養のヒント (理想体重を維持することで肺機能をサポートできる) など、それまで考慮していなかったトピックに関する記事の掲載を求められました。患者さんは担当医師や患者仲間に連絡し、ニュースレターで使用されている言語や語彙が正確であり、患者コミュニティに関連性があることも確認しました。このケースで弊社は、患者さんのアイデアや興味を活用し、治験中のエンゲージメントを向上させることができました。

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