Self-reliant developers can help
over-stretched regulators expedite reviews

By Steve Winitsky, M.D., Vice President, Technical - Regulatory Strategy

7 min

自立的な開発者は規制当局の負担を軽減し、迅速な審査を後押しすることができます

新たな細胞・遺伝子治療 (CAGT) の申請が世界中の規制当局に殺到し、企業は然るべきときに規制当局の助言を受けるのが難しくなっています。FDAのオンコロジー センター オブ エクセレンスの元責任者であり、パレクセルの元主席医務官でもあるAmy McKeeは、規制のボトルネックを軽減する3つの戦略を提案しています。

2022年末の時点で世界のパイプラインに3,000件を超えるCAGTのアセットがあることを考えると¹、規制当局が次世代の遺伝子編集技術をはじめとする膨大な数の申請の審査に苦労しているのも当然と言えるでしょう。FDAでは経験豊富な職員が治療製品局 (OTP) を離れ、リソース不足がさらに深刻化しています。生物製剤評価研究センター (CBER) の責任者であるPeter Marksが最近語ったところによれば、OTPでは30日間の治験薬 (IND) の審査期間中に規制当局と治験依頼者との対話を増やすべく積極的に雇用を進めており、遺伝子治療の臨床保留案件が減る可能性があるとしています²。 

これにより規制当局は、医薬品開発者の協力も得られるようになる可能性があります。パレクセルではお客様がより自立的に治験を進めるための助言や、開発の進行を確認し、的確な決定の裏付けとなるデータを提供しています。Amy Mckeeによる開発者への3つの提案は以下になります。

CMCの準備作業を増やす

多くの場合、CAGT企業は、原薬および医薬品を評価するためのアッセイと仕様が適切であることを確認するために、FDAの助言を待っています。私の経験では開発者が社内での準備作業を充実させることで、選択したパラメーターが製品の開発段階に適していることを、確かなデータに基づいて論理的に説明できるようになります。また、承認済みの製品に関する先例研究も役に立ちます。

化学、製造、品質管理 (CMC) に関する意思決定には常に科学的根拠が求められますが、特に新規申請を規制当局に提出する際には、その重要性が一層高まります。既存のデータやFDAの見解がないということもあります。その場合、企業は分析方法やプロセスの段階を裏付けるため、通常必要とされるよりも多くのエビデンスを提示する必要があるかもしれません。

力価試験や製造工程 (または施設) 間の比較可能性に関する十分な社内データを取りまとめていない場合、生物製剤承認申請 (BLA) の提出段階であっても、高額費用のかかる遅延が発生する可能性があります。科学的な品質や論拠については、規制コンサルタントだけでなく、客観的な立場の科学専門家からも外部の意見を得るのが最善です。企業は科学的な事柄に没頭するあまり、CMCのロードマップを見直したり疑問を投げかけたりすることを疎かにしてしまうことがあるからです。

検証プロセスまたは製造プロセスの各段階について確たる根拠を用意した上で、INDで規制当局に書類を提出し、そうしたリスクを緩和するようにしてください。6つのステップがある場合は、最後のステップだけでなく、6つすべてのステップで論拠を示します。 

先日、FDAで前例のない次世代細胞療法を開発しているお客様と仕事をする機会がありました。お客様の製造工程は最適化されておらず、プロトコルで指定された単剤療法の用量がまだ提供できていない状況でした。その一方で、併用療法の方が患者さんにより大きな利益をもたらす可能性があることを示唆するデータも出てきました。新しいレジメンの治験をすぐにでも開始したいというのがお客様の意向でしたが、細胞治療における製造工程はまだ最適化されておらず、再現性もありませんでした。併用療法の各成分は組み合わせて試験を行う前に、確実に製造・供給できる状態にしておく必要があります。基本を固めてから次の段階へ進むことが重要です。 

私はお客様に対し、治療の状況がどのように変化する可能性があるかを十分に理解したうえで、慎重な段階的意思決定を行うよう助言しています。

Amy McKee, M.D.

綿密な臨床開発計画の検討

現在の環境では、企業には臨床開発計画全体を注意深く検討することが求められます。新規のCAGTを開発していることを理由に、限られた数の患者さんから得られた短期的な有効性データで十分だと考えてはなりません。製品が科学的または技術的に画期的である場合でも、その製品が長期的な結果をもたらすとは限りません。

私はお客様に対し、治療の状況がどのように変化する可能性があるかを十分に理解したうえで、慎重な段階的意思決定を行うよう助言しています。製品が前例がないほど合理的で、なおかつ持続的な有効性を示さない限り、臨床開発には想定以上の時間と費用がかかる可能性があります。 

たとえば、命を脅かすおそれのない慢性疾患では、FDAはより多くの追跡データを求めています。同様の状況は、オンコロジー製品においても見られています。先日あるお客様が、血液がんの治験で主要評価項目として3ヵ月を基準としていましたが、それを超える長期的な効果を示すようFDAに求められたことに驚いていました。当局は患者さんの1年後の様子を知りたかったため、3ヵ月以上効果が持続するという証拠を求めていたのです。 

オンコロジーの分野で最初に承認されたCAGTは、それまで複数の治療を受けていた患者さんに対する短期的な治療結果を大きく変える成果を上げました。しかし、規制当局では患者さんのリスク ベネフィット プロファイルが、時間経過と共にどのように変化するかを精査する傾向がさらに強まっています。また、ベータサラセミアや鎌状赤血球症など、直ちに命を脅かすものではない疾患では、そのリスク プロファイルはまったく異なります。こうしたケースでは既存の疾患管理では輸血を繰り返すなどの処置が行われ、患者さんのQOLは著しく低下します。対照的に、細胞・遺伝子治療ではそのような処置が不要になる可能性があります。目標は人生をより長く、より豊かに生きることであり、短期的な臨床転帰を達成することではありません。

多くのCAGTでは再治療が行われないため、企業は効果の持続性を実証することにより、患者さんのニーズを満たすことができるかどうかを綿密に検討する必要があります。

規制当局の視点で考え、慎重にトレードオフを行う

多くの新興企業は、限られたリソースで重要な開発決定を行う必要があります。最も重要な懸念は、どのくらいの時間と費用がかかるのか、という2点です。各段階で必要最低限のことだけを目指す企業もいます。しかし、規制当局が頻繁かつタイムリーに助言する余裕がない場合、企業は短期的な決定が長期的なギャップや問題を生じさせないように注意する必要があります。経済的と思われた選択が作業のやり直しを招き、結果的により多くの費用がかかってしまうこともあります。

リスク管理の方法の1つは、規制当局の立場で考え、企業側は何をすべきかを検討することです。その答えは必ずしもあらゆることにさらなる時間と予算を費やすことではありません。代わりに規制当局が尋ねる質問を予測し、それに答えるために必要なデータを特定してください。このプロセスを繰り返すことで、データパッケージが構築されます。お客様との業務において、弊社は元規制当局職員から成るチームを活用し、ロールプレイを通じてミーティングや審査をシミュレーションし、企業側の主張を固める手助けをしています。綿密な準備が遅延を減らし、ますます重要性を増すFDAとの対話から得られる恩恵を最大限に享受できることがわかっています。 

規制当局は科学者の集団であるため、適切な選択を行ったことを納得してもらうには、重要な決定をどのように段階的に進めてきたかを示すことが必要です。CAGT治験の妥当性を示すには、理解しやすいエビデンスによる裏付けのある仮説を提示する必要があります。規制当局で働いていた頃、私はよく企業が科学で審査官の目をくらまそうと、自分たちの提案の裏付けに必要な地道な作業をおろそかにするのを見てきました。次のことを肝に銘じてください。CAGTの規制に関わる経験豊富なFDAなどの機関が、これまでにない技術に目がくらんで本質的な部分を見落とすことはありません。審査官が求めているのは、従来のチェック項目を全て満たしていることと、論拠が十分に納得できるものであることです。

時折、企業は製造工程の重要な段階で、論理の飛躍を余儀なくされる場合があるかもしれません。その時には誰も気づかないことに期待して、そうした論理の飛躍をおざなりに扱わないでください。潜在的な欠陥があることを自ら認め、代替案を検討しているのであれば、規制当局がその飛躍を受け入れる可能性はあります。ただし、論理の飛躍があることを審査官自身が発見したのなら、承認を得られる可能性は下がります。 

規制当局が頻繁かつタイムリーに助言する余裕がない場合、企業は短期的な決定が長期的なギャップや問題を生じさせないように注意する必要があります。

Amy McKee, MD

  1. Shields, A. et al. (2023) White Paper High Points and stumbling blocks in cell and gene therapy ..., www.healthadvances.com. Health Advances. Available at: https://healthadvances.com/whitepaper/health_advances_cgt_industry_state.pdf (Accessed: April 1, 2023). Health Advances operates as an independent strategy consulting unit of Parexel International.
  2. Sutter, S. (2023) US FDA cell/gene therapy office 'aggressively recruiting' amid reorg, senior staff departures, pink.pharmaintelligence.informa.com. Pink Sheet. Available at: https://pink.pharmaintelligence.informa.com/PS147754/US-FDA-CellGene-Therapy-Office-Aggressively-Recruiting-Amid-Reorg-Senior-Staff-Departures (Accessed: April 1, 2023).