パレクセルによる先進医療を対象とするFDAの迅速指定の傾向の分析

By Mark Mathieu, Executive Director, Strategic Research

Published on: Sep 5, 2025

10 min

パレクセルによる先進医療を対象とするFDAの迅速指定の傾向の分析

FDAによる迅速指定の傾向は、R&Dパイプラインにおける革新性、将来性、推進力の指標であり、得に最先端の治療において重要です。

この四半期ごとの分析では、パレクセルの細胞・遺伝子治療センター オブ エクセレンスが、生物製剤評価研究センター (CBER)が規制する先進医療のFDA迅速開発指定の最新の傾向を検証。得に革新的かつ新規製品が利用できる3つの腫瘍な規制指定である画期的治療薬指定 (BTD)、再生医療先進治療 (RMAT)、ファストトラック (FT) 指定に焦点を当てます。革新的な組織のレギュラトリー戦略を支援するため、このレポートでは以下の規制に関するインサイトを提供します。

  •  最新のトレンドデータ:業界における規制上の指定申請とFDAによる指定承認に関するデータであり、先進医療に携わる他の企業がこれらの指定を追求している度合いや、CBERが指定を承認している範囲が浮き彫りになります。
  • 先進医療の最新の指定に関する詳細なリストと分析:各指定の根拠を特定します。これには申請/承認を裏付けるために用いた各治験の段階と規模が含まれ、該当する場合は指定ごとに根拠の正当性を示すと考えられる患者さんの奏効率が含まれます。
  • パレクセルの専門家による解説と分析:データおよび分析結果に関する補足的な背景情報や分析を提供します。

ブレイクスルー指定:依然として最上位のFDA迅速指定なのでしょうか?

2012年の創設以来、ブレイクスルー指定 (BTD)は医薬品、生物製剤、ワクチンを対象としたFDAの規制上の最上位の指定とされてきました。RMAT指定でも細胞・遺伝子治療 (CGT) にとって、規制上得られる具体的なベネフィットは同じです。これらの製品はどちらの指定でも対象となりますが、BTDステータスに適格となるにはRMATよりも高い基準を満たす必要があります。

BTDには先進医療にかかわってきた興味深い10年以上の歴史があります。FT指定と同じですが、RMAT指定とは異なる点として、BTDの対象はワクチン、CGTなど、CBERの規制を受ける製品のすべての主要カテゴリーにわたっています。 

最も高い適格基準が定められているCBERの指定であるBTDでは、このプログラム運用期間 (2012~2023年) における承認率は33%にすぎません。 業界からの申請を基準にすると、生物学製品および関連製品でBTDの注目度が急上昇した後、2016年の創設とともにRMATの急上昇が始まり、CGTにとってはより低い適格基準でBTDと同様のベネフィットが得られる競争力のある経路が確立されました。その後はRMATなどの他の優先審査指定と類似の傾向をたどり、パンデミック中はCBERへのBTD申請件数は大きく減少し、2021年には10件と最低を記録しました。しかし、業界からのBTDとRMATの申請件数は大きく反発し、2023年度には最高を記録しました。BTDの承認率は2022年に最高点に達しましたが、2023年に承認を受けたのはBTD申請件数の29%でした。2024年の時点で、BTDの承認率は2013年以降の最低水準にとどまっています。

CBER BT申請/承認動向 2012-2024

CBERパイプラインで急成長しているCGT品目にとって、RMATが同じ規制上のベネフィットを利用する選択肢となるということを考慮すると、BTD承認件数が抑えられていることは驚くべきことではありません。

正式に提出する前に、BTD申請の見込みについて非公式のフィードバックを治験依頼者が依頼できる経路が確立されていることが重要です。RMAT指定を受けるに至った特定の治験依頼者が、その時点での臨床データの性質と量に基づいて、この非公式な助言プロセスによってBTD申請の提出を控えるよう助言を受けたかどうかは不明です。また、RMAT提出の見込みに対して、非公式のフィードバックを提供する同等のプログラムは存在しないということも付け加えておかなければなりません。

Steve Winitsky, M.D.
Vice President - Technical

実際、担当機関の非公式のブレイクスルー治療助言プロセスの成果がほとんど知られていないということは、BTD申請をすぐに提出できる用意が整っている企業の割合が少ないことを示しています。2015年5月から2018年4月までに医薬品評価研究センターが開催したBT助言の事前会議に関する2019年のFDAの調査によると、245回の開催のうち、各時点でBT申請の提出が「妥当である」と同センターが助言するに至った会議は20%にとどまりました。ほぼ半数 (44 %) の会議で、各時点で「正式なBTD申請の提出は時期尚早である」との助言を治験依頼者が受けています。

RMAT指定:最も申請の多かったCBERの優先審査指定

対象となる製品が限定的であるにもかかわらず、RMATは2016年後半に創設されるとすぐに最も申請の多いCBERの優先審査指定となりました。それ以来、対照となるCGTの開発者は、RMAT指定、BTD、またはその双方を申請できるようになり、CBER会議内での高い可視性や効率的なアクセスを含む、数多くの潜在的メリットを得られるようになりました。

BTDとRMATで得られる実質的なベネフィットは同じですが、適格基準がより低いという認識から、CGT開発者はRMATを支持してきました。CBERが低い基準を常に認めているわけではありませんが、FDA当局者は近年、この点について議論しています。

最初に申請が通ったとき、私はBTとRMATの違いについてかなり懐疑的でした。しかし、進化の過程を経て、この指定を受けるための基準がやや緩和された事実、つまり、既存の標準治療よりも優れているということを示すのではなく、臨床的ベネフィットの可能性を示すだけでよいことによって、臨床情報が十分でない製品も指定対象とできるようになったのです。“RMATの低いエビデンス基準”は、開発初期段階が困難な再生医療製品の一部にとって、ある程度有益と言えます。

CBER Director Peter Marks, MD, PhD
@ FDLI Annual Meeting,
May 20, 2021

CGT開発者がRMATを支持する背景には、もう1つの利点も関係している可能性があります。それは規制上の価値という点で、RMATが次の最上位の指定へと昇格する可能性を秘めていることでしょう。「私が気づいたのは一部の治験依頼者は、BTD申請では得られない早期のインサイトを得る手段として、RMAT指定申請を捉えてる点です」とWinitskyは指摘します。「開発の早い段階でこの接点が生まれ、治験依頼者と当局の見解に相違がある場合、臨床開発計画の主要要素について相互に合意した変更点をFDAとさらに議論する可能性が高くなります。」

CGTのRMAT承認率は、CBERが規制の対象とするすべての製品でBTDよりも高くなっていますが、ほぼ同等と言えます。年によっては、BTD承認率の方が顕著に高いケースさえ存在します。多くの企業がエビデンスを減らし、早い段階の臨床データで適合できる程度に適格基準が低くなっているという認識に後押しされ、RMAT指定の最低限の試験により積極的に取り組んでいる可能性があります。RMAT指定の申請件数は長い間、BTD申請件数を2倍以上も上回っています。2023年から2024年までのところ、CBERのRMAT承認率によってBTD承認率は大幅に改善しました。

RMATと画期的治療薬指定のCBER申請件数 2017-2024

※2024年度 第四半期 (2024年3月31日)まで

最近のRMAT指定の根拠

最近のRMAT指定の根拠を調べると、指定の適格基準について重要なインサイトが得られます。指定の多くは第I相または第I/II相の試験データに基づいており、その多くは「中間」データまたは「予備」データとして特徴付けられます。

RMAT指定の多くはかなり小規模な治験対象集団に基づいており、これはおそらくまれな病態を対象とする遺伝子治療が多数であるという現実を反映しています。

CGTにおける成功への道筋は、往々にして前例と価値によって条件付けられることがよくあります。該当企業にとって初期開発段階であることを考慮すると、アセットが十分に特徴付けられている既知の適応症は、RMATのより安全な経路を通じた価値を模索することができます。

Chris Learn, Ph.D., PMP
Senior Vice President of Parexel’s Cell & Gene Therapy Center of Excellence

ファストトラック指定:FDAの迅速審査指定で最も申請・承認されたもの

FDAのFT指定を受けたバイオ医薬品企業の経営陣は、開発プログラムの検証や、担当機関との緊密な連携についてよく言及しますが、この指定で本当の規制上の優位性を得られると考えている方はあまりいません。しかし、それでもなお注目を集める事例があります。Candel社の株価は、2024年2月13日に再発性高悪性度神経膠腫に対するHSV-1腫瘍溶解性ウイルス免疫療法についてCBERのFT指定の公表以降、約25%上昇しました。

FTに対する根強い支持は、間違いなくその適格基準の低さが影響しています。2021年から2023年までに提出されたFT申請件数は、連続して記録を更新し、2024年はすでに過去の記録を上回ろうかという勢いをみせています。

CBERファストトラック承認件数  2013-2024

※2024年度 第四半期 (2024年3月31日)まで

CBERにおける成功率70.3% 1998年3月~2023年3月31日

RMATやBTDとは異なり、FT指定は前臨床データに基づいて行うことが可能です。多くのFT申請は臨床データに部分的に基づいていますが、CBERによる前臨床データのみに基づいたFT指定の承認は続いています。

ファストトラックは認知度や関心を高める優れた方法ですが、その前提はプロセスの初期段階に位置するため、関与するステークホルダーが本当の価値を見定めるまでには、長い時間を要します。

Chris Learn, Ph.D., PMP
Senior Vice President of Parexel’s Cell & Gene Therapy Center of Excellence

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