患者支援団体 (PAG) は、企業が患者さん、介護者さん、ご家族にとって利便性、透明性、人道性の高い希少疾患治験をデザインするうえで重要な役割を果たします。ただし、最適な治験デザインを実現するためには、開発の初期段階からPAGとソートパートナーとして連携する必要があります。現状では治験のコンセプト策定段階からパートナーとしてPAGにアプローチする企業は少なく、治験参加者の募集がうまくいかないときの最後の手段としてPAGに頼るケースがほとんどです。PAG、医薬品開発業務受託機関 (CRO)、バイオ医薬品企業が持続的かつ有意義に対話することで、医薬品開発プロセス全体を通して患者さんが参加する機会が生まれます。企業が希少疾患PAGと長期的に効果的なパートナーシップを築くにはどうすればよいかについて、パレクセルの専門家であるPam RattananontとJulie Shuttに考えや経験を尋ねました。
PAGは医薬品開発者に何を望んでいるのでしょうか?
Kistler: 希少疾患分野のPAG組織は実際的な知識やノウハウを豊富に持っており、患者コミュニティに治療を提供するために同じ切迫感を持ったパートナーを求めています。PAGは医薬品開発の仕組みをよく知っています。業界と患者支援団体による年次会議では、バイオテクノロジー企業の設立方法や研究資金の調達方法をPAGに説明する教育セッションが開催されます。患者さんと介護者は治験依頼者への協力を望んでいます。しかし、データと資金を提供したにもかかわらず、治験依頼者がビジネス上の理由で方針転換やポートフォリオの組み換えを決定した場合、彼らは不満を感じます。特に急速進行性の疾患と闘っている場合、これは患者さんと保護者さんにとって大きな打撃となります。時々PAGが企業を介さずに研究者に直接働きかけ、自ら研究資金を提供することもあります。PAGは投資家を惹きつける方法や臨床開発プログラムを推進する方法を学んでいます。
PAGは医薬品開発者をどのように支援できるのですか?
Kistler: PAGは、患者さんの生活の質を反映する評価項目についてのインサイトや知見を治験依頼者に提供できます。多くの患者さんは、疾患の負担を軽減する治療法を求めています。救急外来への来院回数が減ったり、お子さんの発作が月に100回から50回に減ったりすれば、それは患者さんにとって大きなメリットです。
最近の例として、希少神経疾患の治療薬を開発しているある新興バイオテクノロジー企業があります。同社は患者さんが同意済みの医療記録プラットフォームから収集したリアルワールドデータを活用して、新薬臨床試験開始 (IND) 申請を強化しました。これらのデータに基づきFDAは、当初このINDに下した臨床保留を解除しました。このように患者データやPAGの協力は、開発者にとって大いに役立ちます。
PAGと協力するためのベストプラクティスを教えてください。
Kistler: 希少疾患の患者さんと協力する場合は、良いソートパートナーになることに投資してください。時間をかけてこれを正しく行い、日々のロジスティクスや食事の要件、そして希少疾患の患者さんだけでなく、そのご家族全員にも配慮したケアのコーディネートについて理解します。このような患者さんは多くの場合、病状が急速に進行し、時間的な余裕がほとんどありません。ある治験では、治験依頼者が適切な事前調査を行わなかったため、対象の患者集団が特別な食事療法を受けていることを知りませんでした。その結果、食事制限に抵触する薬剤の製剤を開発してしまったのです。そのため患者さんを登録し、治療法に対する期待を高めた後で治験を中止し、新しい処方でやり直さなければなりませんでした。
PAGと協力する時に避けるべきよくある間違いは何ですか?
Kistler: 実験的な治療法の効果を過大評価したり、リスクを過小評価してはなりません。たとえば遺伝子治療は、希少疾患の患者集団のごく一部にしか効果がありません。患者さんが関連する遺伝子変異を持っていても、治験の除外基準となる別の遺伝子変異も持っている場合があります。患者さんの感情や期待は高まっているため、メッセージは正確で科学的根拠を持つ包括的なものでなければなりません。理想的な未来を過度に強調するものであってはなりません。
また、細胞・遺伝子治療 (CGT) はまだ新しい分野なので、多くの患者さんが治療法や追跡調査の要件を理解していません。医師でさえCGTを理解していない場合もあり、認知度やアクセスの程度は国によって大きく異なります。パレクセルにはCGT専門家によるチームがあり、治験依頼者、PAG、医療コミュニティとの連携をサポートして、適切な情報提供や期待値管理を行っています。
希少疾患の患者さんと協力する場合は、良いソートパートナーになることに投資してください。時間をかけてこれを正しく行い、日々のロジスティクスや食事の要件、そして希少疾患の患者さんだけでなく、そのご家族全員にも配慮したケアのコーディネートについて理解します。
Jamie L. Kistler, Ph.D.
Senior Director, Customer Strategy, Medical Communications,
Parexel International