希少疾患治療薬の開発における最も困難な側面の一つは、臨床的ベネフィットを確立するための適切なエンドポイントを選択することです。関連性があり、感度の高い有効性エンドポイントを決定するための出発点は、疾患の病因と医薬品の正確な作用機序 (MOA) を理解することです。ただし、希少疾患や超希少疾患の場合、その疾病の自然経過についてあまり知られておらず、治験薬の作用機序が完全に解明されていないことがよくあります。多くの場合、患者さんを見つけることが困難であるため、治療効果を十分に測定できるだけの治験の検出力を確保することが難しくなります。
希少疾患および超希少疾患の最適なエンドポイントを特定することは、多くの労力を要します。急速に進化するこの分野での私の経験に基づいて、最善の方法をいくつかアドバイスさせていただきます。
関連性や利便性の観点からだけでなく、最適なエンドポイントを追求
これまでの経験から、治験依頼者は考えうるエンドポイントは多数あるものの、どれが最も有意義かが不明という状況に直面することが多々あります。このような状況では、最適なエンドポイントを特定することが課題になります。最近、ある治験依頼者から複雑なケースについて相談を受けました。患者さんの運動機能に影響を及ぼす、進行性の神経学的表現型を伴う希少自己免疫疾患の治療法を開発しているとのことでした。この慢性疾患は末梢神経系に体系的に損傷を与えるもので、医薬品が機能の喪失や変化に与える影響を測定するための客観的および主観的エンドポイントが多数考えられます。しかし、臨床的および統計的に最適なエンドポイントはどれでしょうか?また患者さんにとって最も意味のあるエンドポイントは?この疾患のエンドポイントには、ゴールドスタンダードはありません。
このジレンマを解決するために採用したのは、多分野にわたるアプローチでした。弊社の医療専門家が、この疾患の科学的・医療的側面についてキーオピニオンリーダー (KOL) にインタビューを行い、公開されている文献を徹底的にレビューし、類似の適応症で承認された医薬品の説明資料と、承認されなかった医薬品に関する情報を分析しました。徹底的なデューデリジェンスの実施後、治験薬に最適化された、データに基づくエンドポイントセットを提案しました。治験依頼者はこれらをプロトコルに組み込んでいます。
希少疾患治験に最適なエンドポイントを見つけるには、その疾患に対して徹底的かつ分野横断的なデューデリジェンスを実施します。エンドポイントの選択は、可能な限り科学的かつデータに基づいたものであり、患者さんの優先事項を反映している必要があります。関連性や利便性の高いエンドポイントで妥協しないでください。それらは最適でない可能性があります。
希少疾患の患者集団を詳細に分析
希少疾患に取り組む中で最もよく直面する問題の一つは、疾患の遺伝子標的と複雑な変異プロファイルに関する徹底的かつ詳細な科学的理解が欠如していることです。これにより、患者さんのサブカテゴリ化が不十分であったり、バイオマーカー検査が適切でないなどの理由から、誤った患者集団を治療してしまう可能性があります。
たとえば研究によると、希少疾患の80%以上が遺伝性であり、約50%が乳幼児と小児に影響を及ぼしています。このような状況では多くの場合、エンドポイントは年齢群、遺伝子型、表現型によるカスタマイズが必要になります。また企業は患者集団を層別化する必要があります。たとえば、2歳以下、3~12歳、および青年期の患者さんは異質性の高いサブ集団を表し、年齢に応じた異なるエンドポイントとカットオフを必要とする可能性があります。さらに、異なる年齢群の希少疾患の患者さんは、疾患進行の段階が異なり、異なる遺伝子プロファイルのサブタイプを持っている可能性が高くなります。
治験において検討される異なる年齢層の患者さんと疾病発現の異質性を詳細に理解してから、エンドポイントの選択を進める必要があります。たとえば最近、希少筋骨格疾患の遺伝子治療を開発する治験依頼者に協力しました。デューデリジェンス評価では、この疾患の患者さんの歩行能力低下率は、異変サブ集団ごとに異なることがわかりました。治験依頼者と協力して、治験の対象患者サブ集団に合わせて、異なる臨床エンドポイント、カットオフ、バイオマーカーを確立しました。
さらに治験実施施設、医療機関、またはリモートで、各年齢群で選択されたエンドポイントを収集して評価することは、どの程度実現可能で実用的でしょうか?その答えは、治験デザインと質の高い実施におけるエンドポイントの選択に不可欠です。
NICHD Rare Disease Research