内分泌疾患や代謝機能障がいは、世界中の人々に個人・社会・医療・経済のあらゆる面で多大な負担をもたらしています。慢性疾患は急速に増加しており、特に肥満は精神的健康にも深刻な影響を及ぼし、若年層において大きな懸念となっています。ある予測によると、2050年までに世界の成人の半数以上、子どもと青年の3分の1が過体重または肥満になるとされています1 。
しかし、希望も見え始めています。例えばGLP-1(グルカゴン様ペプチド)受容体作動薬であるセマグルチドが、2型糖尿病治療薬として初めて承認され、その後に肥満症治療薬としても承認されました。それ以来、体重減少および血糖関連指標の改善に高い有効性を示すGLP-1および関連化合物の使用が急速に広がっています。医療品開発企業にとって、革新的な治療法を市場に届ける大きなチャンスが到来しています。実際、現在100種類を超える抗肥満薬候補がさまざまな開発段階にあります。しかし、機会の拡大とともに競争とリスクも激化しています。
既に糖尿病・肥満症治療薬を有する企業は、競合他社から市場シェアを守るためにポートフォリオを拡充し、肥満症の枠を超えて異なる患者層を対象とするプレシジョンメディシン(精密医療)戦略を展開する必要があります。一方で新たに市場参入を目指す企業には、第2世代GLP-1や併用療法、さらには肥満および関連する心代謝性疾患(例:代謝機能障害関連脂肪性肝炎[MASH])に対する次世代治療薬の開発戦略に関する的確な指針が求められます。
パレクセルはこの分野における豊富な深い経験を活かし、医療品開発企業を多方面からサポートできる独自の体制を有しています。成人・小児内分泌専門医をはじめ、規制対応、マーケットアクセス、リアルワールドエビデンス、試験デザイン、バイオスタティスティクスの各分野のエキスパートが連携し、明確な市場ポジショニングの設定、最適な試験デザイン、効果的な規制戦略を通じて製薬企業を包括的に支援します。希少な代謝疾患を対象とした小規模試験から、肥満症、骨粗しょう症、2型糖尿病を対象とした大規模試験まで、専任のプロジェクトチームが強固なグローバルサイトネットワークを活用し、適切な施設を選定します。また、治験参加者の参加意欲を高め、負担を軽減するためのカスタマイズされた患者リクルートメントおよびリテンション戦略を提供しています。さらに主要ベンダーとの連携を通じて臨床試験の実施を管理し、糖尿病領域の臨床試験向けに継続的血糖モニタリング(CGM)や血糖関連データ取得を含むeCOAおよびセンサーソリューションも提供しています。
肥満症および2型糖尿病
成人の肥満症および2型糖尿病を対象とした臨床試験の経験から、数多くの競合試験が実施されている米国においても、肥満症試験への関心は依然として非常に高いことが分かっています。そのため患者登録は迅速に進む傾向がありますが、適格基準を満たし、試験への参加意欲が高く、継続意志のある「適切な治験参加者」がスクリーニングされることが極めて重要です。目標とする患者層を確実にリクルートし、プロセスを加速させるためには、登録期間を通じて治験施設と積極的にコミュニケーションを取り、施設ごとの戦略を評価・調整することが鍵となります。パレクセルのプロジェクトチームは、肥満症試験における離脱リスク ― 消化器症状による中止、あるいはプラセボ群で効果が感じられないと判断した場合の離脱 ― に対応するため、専用の患者リテンション戦略を活用してきました。
こうした戦略により、私たちは予定よりも早く試験マイルストーンを達成する高い成功率を実現しています。例えば、成人の2型糖尿病(T2DM)患者および肥満症患者を対象としたグローバル第Ⅱ相試験では、パレクセルは迅速な患者登録を達成し、T2DM群は予定より5週間早い3ヵ月で登録を完了しました。この画期的な試験は、肥満症領域における方法論、デザイン、オペレーションにおいて、新たな基準を確立する成果となりました。
過去5年間の実績
第I相から第IV相の肥満症および肥満症関連臨床試験
登録患者数
実施施設数
代謝機能障がい関連脂肪性肝炎(MASH)
パレクセルはこの領域の治療法開発において豊富な経験を有しており、患者登録と継続率の向上、治験施設との連携強化、追跡不能症例の最小化に関するベストプラクティスを確立しています。また米国、欧州、アジア、オーストラリアに広がる確立された治験施設および治験責任医師のネットワークを有しています。
直近のプロジェクト例として、肥満症および肝脂肪症の患者さんを対象に安全性と忍容性を評価する第Ib相試験があります。複数の用量群とコホートを含む複雑な試験デザインに加え、各投与間に72時間の間隔を義務付けられ、3ヵ月にわたる厳密なスケジュール管理が必要とされるものでした。パレクセルのチームは革新的な戦略やプロトコル改訂を導入するとともに、各来院をより柔軟に管理できるツールを活用し、試験スケジュールの遵守率を大幅に改善しました。その結果、最終患者登録/初回訪問のマイルストーンを契約上の予定日より76日早く達成しました。